「ったく!!!近ごろなんであたしの周りは、自己中な男ばっかなんだよっ!!!」
なぜに自分が振り回さなければならねぇーんだっ!!と思いながらもさっさとジャージに着替え、

「っーか、あんた今日総体(全国中学総体)の試合じゃねーの!?」

未茉は玄関を出てハタッと気づいたのであった。

瑞希も和希もママもいないのは、和希の全中の試合に朝から応援に行ってるからだ。
もちろん禅は和希と同中の王子中であり、なんせエースである・・・。


「そう。」

「そうって・・・時間はっ!?」
「あと5分で電車に乗らなきゃ間に合わない。」
「はっ!?」
ここから駅までどう頑張っても10分……と考える。
「うちのハイヤー(送迎)呼びますよ。」

「おっし!禅チャリで行くぜ!」と車庫からチャリを引っ張り出すと、
「なんですか。このレトロな乗りもんは。」
「つべこべ言わず乗れ!!!」

「うっひょぉおお~~~~~~~!!!!!」
二人乗り自転車は猛スピードで駅まで向かった。


キキキィーーーッ!!

バッコンッ!!追突するかのように自転車は自転車置き場に突っ込まれ、激しいブレーキによって止まった。

「いってえっ!!てめぇコラチビ!!国体前のあたしに怪我させる気かよ!?」
普段車送迎がほとんどの坊っちゃんの禅は面白がって運転するものの、自転車から放り投げられた未茉は地面に叩きつけられた身体を押さえながら怒鳴るも、

「中々悪くない密着する乗り物でしたね…」
「おい!禅!!ぶつぶつ言ってねぇで早くっ!!」
グイッ!!と手を引っ張られると身体も引っ張られる程の勢いで、

『発車しまーす』のアナウンスと共に未茉の強烈な腕力に寄って閉まる数センチの扉から車内に放り込まれ、
「いてて。」
「いってぇーー!!!ゲッ!!逆方向の電車じゃんこれ!!」

未茉は窓の景色と高校へ向かう駅とは真逆のホームから乗ったことに驚き叫ぶ。