「腹減ったぁ~~~!!!」

徹夜で練習していたふらふらの体を休ませる為に新幹線で爆睡していた未茉は鳴り止まない腹の虫を引き連れての久々の我が家へと帰宅だった。

「ただいまぁ~~!!ママぁ~~~!!飯ぃ~~~!!今すぐ飯ぃ~~!!!ん??」

玄関の扉を開けると、来客なのかうちの住人ではない靴がいくつか並べられていて、

「よぉ、おかえり。」

ニヒルな笑顔を浮かべて出迎えるのは何故かお手玉のように空中に投げるイチゴを食べる嵐だった。
「うおっ!!なんでお前が…」
「朝一の新幹線でこっち来たんだよ。」
「えっ!?そうなの!?だったら一緒に帰りゃよかったのに。」

「誰が湊なんかと同じ電車に乗れるか。」

フイッ!とキレる横顔に、
「珍しい奴なぁ。翔真を嫌うなんて。アイツ男にも女にもモテるのに。」
「今のところ世界で一番嫌いだね。」
「そんなにかっ!」
なんかおもしれぇーと高笑いする未茉は、とりあえずお腹がすいて死にそうだったので、
「あーん。」と嵐の食べるイチゴに向かって口を開ける。

「……!」
顔を近づけ至近距離で目を閉じる未茉に嵐の胸は高鳴り、イチゴを持つ手が震えた。


「うめぇ!!これ福岡の苺か?」

昔からこんなこと日常茶飯事だったのに、今更ドキドキする自分に嵐は一瞬戸惑った。

「へー!福岡って苺が有名なのか?」
「しっ…知らねーよ!!」
苺のように赤くなってく顔を隠そうとする嵐。

「あっ!嵐が来てて、さっきの靴ってことはっ……!!」
そんな彼の様子など気づきもしない未茉は、何やら閃いたようにリビングへと走った。