「ん、あ?あれそういや嵐は?」

ハタッと歩く足を止めてその存在に気づき、合宿所の建物を振り返ると
「朝一の新幹線で帰った。」
隣を歩く翔真が無表情でどこか冷たくそう答える。

「え、そうなの?なんだよ。挨拶もなしに。」
やっぱ感じ悪いんだなっとブツブツ言いながら未茉は歩き出そうとした時、

「ーー!」

感じた視線にもう一度振り返った。

「未茉ちゃん?」

「…エマだ。」

合宿所の一番端っこの部屋、朝なのに締め切られたカーテンの隙間からエマは顔を覗かせこちらを見ていた。

「……」

確かに目があったのに、シャッ!とカーテンを閉じられてしまった。

「日本一……か。」

初めて手も足も出ずに吹っ飛ばされた相手。まるで歯が立たなかった弱き自分を奮い立たせた。
(いつか越えてやる。エマを。)

「えまぁぁあ!!!日本一を塗り替えてやるからな。待ってろよぉぉお!!」

彼女の部屋を見上げながら聞こえるように未茉は大声で叫び誓った。

新たな目標の先を見据えてーー。