「うぁぁあああんっ!!!」

だが、負けて泣かされるのはいつも嵐の方で、おもちゃもおやつも奪い勝つのは、

「へっへーんっだ!」

未茉だった。

当時、未茉はショートカットだったし、着るものも兄のものばかりだった。

正確には……

「きゃぁぁあああっ!!未茉ちゃん何してるのぉ!?」
母親が目を離した隙に肩まで伸びた髪をベタベタして暑いからと言ってはさみでジャキジャキと切ってしまったのだ。

「だって嵐も匠兄も健兄も颯希(未茉の兄)も和希も短けぇじゃん。」
なんで自分だけ髪が長くてフリルのスカートをはかなきゃいけないのか、仲間はずれにされてる気がして未茉は不快に思ったのだ。

「もーっ!!未茉ちゃんってば、またお兄ちゃんの服ばっか着てぇっ!!!」
唯一の女の子だと嬉しくてたくさん買い込んだ母親の服は一切着ることはなく、兄貴の服ばかり着ていたし、

「いくぜぇー!!それぇっ!!!」
近所に住む星河兄弟や、和希、嵐とドッジボールしても、勝つのはいつも未茉だったからか、

「なぁ、嵐ぃ。」
「うんー?」
「なんで未茉にはそのチンコが着いてないんだ?」

湯船に浸かりながら体を洗う嵐の股間に付いているものをいつも不思議そうに眺めていた。

ーーギュッ!と未茉は物珍しそうにつねるように引っ張ると
「いてぇっ!!!」
嵐は痛くて叫んだ。
「とれねぇのか?」
「とれるわけねぇだろっ!!!」

あの頃、俺は未茉が自分と同じ男だと信じて疑わなかった。強いし、行動も性格も同じだし、なのになんで未茉にはチンコが付いてないのか俺も不思議に思っていた。