「16年間、俺にはこれ以上大事なものなんかねぇ。」
心のずっと奥底に熱く強く秘められた頑な想いを口にし、怒りに少し目を潤ませながらも鋭い眼差しで言った。
その思いの深さと強さが翔真にもひしひしと伝わるも、少しの沈黙に冷静さを取り戻しゆっくり口を開いた。
「……俺はバスケの才能も実力も、未茉ちゃんを想ってきた時間も桐生には劣っても、」
「……」
「彼女を想う気持ちは誰にも負けたと思ったことはない。ただの一度たりとも。」
「ーー!!」
それだけ言い放ち、出口へと歩きだすと、腕を組み扉に寄りかかる前原に気づいた。
「話し合いは終わった?あ、喧嘩だった?」
へぇっと、楽しいものを拝見させてもらったと笑みを浮かべてる。
「……!前原さん」
「とりあえずその子、私の部屋に運んでよ。そんな汗まみれで寝かしたら風邪引くから着替えさせてそのまま寝かすから。」
「助かります。お願いしてもいいですか?」
「こちらも色々先日は助けられたからね・・。」
顔を赤らめ罰が悪そうに前原は言うと、
「あー…!あはは!」
と思い出したように笑う翔真を見て
「湊。」
ポンッとその肩を前原は叩き、
「次は桐生嵐をバスケで見返して惚れ直させな。」
「はい。」
まるで師匠のようなかっこよさにジーンっとする翔真は、
「橘さんが前原さんに夢中なの分かるなぁ。」
「・・余計なこと言うな。」
「あははっ。照れてます?」
「うっさい!湊!そのガキどっかに捨てるからね!」