「渡してくれないなら、この手の加減ができない。」

「……へぇ。バスケでもしねーんじゃねーか。そんな顔。」

(面白れぇ、やる気か。)
緊迫した空気にも関わらず、吐き捨てるように笑った。

「まぁ、40分の勝負事と彼女の存在は比べ物にならない。」
「……ーー!」
その言葉に眉をひそめて耳を疑った。


「お前、バスケ舐めてんのか?」

「舐めてないです。彼女とバスケが比較対象にはならないといったまでです。」
ため息混じりにさらりと放った言葉にますます嵐の中で何かが音を立ててひび割れ、

「俺と未茉はバスケをやるために生まれてきたんだ。栄光をタイトルを掴む為にバスケをやってる。」

「間違いないと思います。」
「だったらお前ごときが邪魔するな。」
「……」
「わきまえろ。」
鋭い眼差しで睨みながら突っぱね、翔真の腕を振り払おうも、

「ーーー!」

その掴まれた手は指が食い込む程の力が嵐の腕にかかってきて、
(ーーコ……コイツ……マジで)
翔真を見上げると、眉ひとつ顔色ひとつ変えることなく腕を握ったまま動こうとはしない。

ーーグイッ!!
嵐が怯んだ時に、未茉を奪うように翔真は持ち上げた。


「おいっ!!」

腕を押さえながら嵐は翔真を呼び止めた。
「昨日俺、お前に言ったよな?」
「……」
「俺には譲れねぇものが二つあるってなぁ?」

生まれて物心ついた時から知った。無くちゃならねぇもの。
無くちゃ生きれねぇもの。
物心ついた時から俺のずっと側にあった大事なもの。


「バスケと未茉だ。」