ーーーゴキィ…ッ!!!
「いってえっ!!」
嵐の頭を掴んで頬を拳で勢いよく殴ると、彼は激痛に顔を歪めた。
「イッ・・・」

「お前・・今キスしようとしたろ?!」
「……」
クソッと赤く腫らした頬を押さえながら小さくなる嵐に、呆れたように体を押し退けて起き上がると、


「未茉、キスしてぇんだろ?」

「はっ?!」
「だからしてやろうかと思ってよ。」
悪びれることもなく舌を出しながら平然と言い放つ嵐。

「誰がおめぇにしてくれと頼んだんだよ。アホか。」
何考えてんだと呆れる未茉の背中をめがけて転がっていたボールを嵐は投げつける。
「いってぇ!てめぇ何す……!」

「気持ちわりぃんだよ!!!」

「!」
バスケ以外で夢中になる未茉の顔、
バスケでも見たことがない未茉のあんな顔、
翔真に嬉しそうに幸せそうに手を回す色めいた表情。
十年も一緒にいたバスケバカだったお前が絶対見せなかった顔を…

「見せやがって……」
そして自分の嫉妬に狂った顔と今日見た悪夢を握りつぶすかのように震える拳を握りしめ、

「色気づいてんじゃねーよ。このヘタクソが」
「・・あ?」
訳のわからぬ言われようにぶちギレて、スイッチが入った未茉は、

「なんだと嵐。もっかい言ってみろよ。」

我慢ならず低い声を響かせた。