合宿最後の夜、宿泊者参加型のバーベキュー広場にやってくるとみんな思い思いに楽しむ中、遅れてやってきた二人だったが、

「わぁーいっ!!肉ぅ!!!」

香ばしい匂いと煙が漂う中を未茉は一目散にお目当ての肉の元へ走ってく。

「あ、白石さん!」
「相沢さん肉はー?!あたしの肉取っておいてくれたー!?」
「もちろんとっといたよー!あっ、その肉は……」
「こぉらぁぁっ!!そのお肉は私のよぉっ!!!」
「うっせージャイコ!」
「んっまぁ!!なんて野蛮な人達の集まりなの明徳はっ!!!」

賑やかすぎる広場の片隅には、哀愁漂わせ一人ポツンと焼肉棒を片手に猫背で座り込む不破に気づき翔真は向かった。


「あれ、不破さんとってもいい顔してますね。」

「あ?おめぇぶっ飛ばすぞっ!」
不破の左頬は真っ赤に膨れ上がっていて笑っちゃいけないと思いつつも、
「ぷぷっ…」と笑いを堪えるも、
「笑うんじゃねーぞ!!」
「いやだって、手のひらの痕がくっきり頬に残ります?普通」
もう駄目だ。と我慢できずに笑いだす。

「新川さんに何したんです?」
「あ?」
年下のくせして全てお見通しの顔で聞いてくる翔真がまた妙に不破は癪に障るのでムスッとしたまま答えずに、

「聞いたぜ。」
「何をです?」

「お前と白石が東京の国体強化選手に選ばれたってな。」

「ああ。さっき正式な連絡があったみたいで野村監督からさっき聞きました。」
「ふん。じゃまた近いうちおめぇと戦うのか。」
「予選勝ち抜けたらですけど。」

(相変わらず謙虚な奴だな。東京代表のベスト10に今年まで無名校から選ばれたっていうのに。)
普通ならもっと喜ぶとこだろ。とその凄さに分からず相変わらずおっとりとお肉を食べる翔真のマイペースさに不破はため息ついた。