「あたしエマに何かしたかなー?」
「え?」
「試合前にエマに嫌いって言われたんだよ。初対面の時は笑ってくれてたし、嫌われるようなことした覚えないんだけど。」

「……」
すぐにピンッときた翔真にはその答えがもちろん分かっていた。が、
(桐生が未茉ちゃんを好きってことも気づいてないんだろうなぁ・・・。)
長い片思いであることを察し気の毒に思うも、人の気持ちをしかもライバルの気持ちを言うわけにはいかず、黙っていることにした。

「悪女だからじゃない?」

「やはり。」
「俺の心を奪ったまま焦らす。」
「あ!?」
「なかなか俺のものになってくれないし。」
「わっーかってるよ!!帰ったら健兄にちゃんと言うから!!」

「なんて?」
言わせたいのかニコッと意地悪な笑みを浮かべながら聞き返すから、

「熊と付き合うってな。」
「こらっ。」
「あはははっ!!」
笑う未茉のほっぺをつねったままの翔真に

「じゃんけんぽんっ!あっち向いてほいっ!!」
急にじゃんけんする未茉に翔真は訳もわからずとりあえず出すも、
「いぇーい!あたしの勝ちっ!」
むぎゅっと翔真の片頬をつねり、
「じゃんけんぽんっ!あっちむいてほい!」
「よしっ。俺の勝ち!」
「むー。」
びよーんっと両頬を伸ばされたまま、むーっとしかめっ面する未茉に

「あはははっ。」
「たてたてよこよこまーるかいてちょんっ!」
むにむにとしたほっぺを回し伸ばされ、びよんっと勢いよく離され、
「いっーてぇー!!お前本気でやったろっ!!」