「嵐。」

「エマ、さんきゅーな。」
お礼を言われるとハニカミながらエマは嬉しそうに首を振った。

「…彼女、凄い子ね。」
「ああ。タフだし、つえーし、ワイルドだし、」
「……かわいいし?」
「うん……まぁ、そうだな。」
急に真っ赤な顔して照れ臭そうに視線を落とす嵐にエマは傷ついた目をするも彼が気づくことはなかった。

「アイツに日本一の名古屋の凄さを見せてやれてよかったよ。」
「…」
「無名校で燻ってるような奴じゃねーからさ。アイツには日本一目指してほしんだ。」
「日本一は私じゃないってこと?」

「……ああ。」

「-ー!」
わざと試すように言ったのに頷いた嵐に驚き唇を噛み締めた。


「キングの俺の隣に相応しいのは未茉だけだ。」




「エマ?」

コンコンとエマの部屋のドアを叩くのはららだった。
「エマー?いるんでしょ?」
何度もノックするが、応答もなく鍵もかかったままだった。

「エマ?今日の夕飯は外でバーベキューなんだって。一緒に行こうよ!」
扉越しに誘うがやはり応答もなく扉の向こうは静まり帰ったままで、ため息ついたららは
「待ってるからねー、おいでよー!」
そう言い残し去っていった。


「……」

灯りもつけず暗闇の静まり返った部屋の中で、一人エマはうずくまり音楽を聞いたまま、倒れこむようにベットに横になっていて、

……ビリビリ……
高校バスケ雑誌の明徳のページの未茉の写真を静かに破っていった。
真っ暗闇の中で真っ直ぐな瞳を光らせ一筋の涙を頬に伝わせながら。

“キングの俺の隣に相応しいのは未茉だけだ。”

嵐のその言葉はエマの心を切なく蝕んでいった。