「こーら。無茶しすぎだ。」

倒れこむ未茉のおでこを軽くノックしながら翔真はしゃがみこむ。

「あたしの辞書に負けはねぇーんだよ!」
ぷんっ!とあぐらをかく膝を押さえながら強気に言うと、
「はいはい。」と軽く流すように微笑む翔真の目は今日も呆れたように優しい。

「あ、鼻血。」
「え!?」
顔をあげながら鼻を押さえると生暖かい感じものがぬるりと通過するのがわかり、

「「あはははっ!だっせー!!」」
結城と不破には指差され、声を揃えながら笑われ、
「うっせぇー!!ぶっかけるぞ!!!」
「こら。大人しくするの。」
暴れる未茉を翔真に捕獲されながら鼻にティシュを詰め込まれ部屋に運ばれてく。

「なぁーんて野蛮な人達なのかしらっ!!明徳ってとこは!!あってはならないわよ!!」
ぷんすか、ぷんすかと明菜ことジャイ子は鼻息を荒くして怒り始めると、

「あんな子絶対に湊君の好きな子だなんて、絶対に認めないんだか……」
-ードンッ!!
言いかけながらその横を通り勢いよく明徳二年の矢野と桐谷と前原は明菜にぶっつかり、

「うるせーよジャイコ。」
「そうだよ。邪魔なんだよ。」
「バカ力。」
負傷を追わされた三人はそれぞれ冷たい視線と冷たい言葉で罵り、さっさと後にすると

「ぬ、ぬ、ぬ、ぬぁんですってぇっ!!!待ちなさぁいつ!!!こらぁっ!!!」

噴火するジャイコの雄叫びに
「あーうるせぇー」と耳を塞ぎながら撤収する名古屋女子のキャプテンは、
「……」
コートの上に残ったままのエマを見つけて
(アイツに限って悔しいとかはないんだろうけど…)
何を考えてるのが全然掴めない彼女の元へ嵐がやってくると、普段学校でも見せないような目を輝かせた笑顔を見せた。

(昨日のエキジビションでも仲良さげだったしな。っーか、エマが惚れてんのは一目瞭然だけど。)

「うぁぁぁあああーんっ!!湊くぅーん!!どこにいったのぉぉおっ」
泣き叫ぶうるさいジャイコに思考を遮断されたキャプテンは、
(シャワー浴びて飯だな。飯。)
さっさと体育館を後にするのであった。