「未茉。お前も日本一になれ。エマを抜いて見せろ。」
嵐は腕を組み、面白そうに二人の一対一に目を凝らし、遠い日の記憶が甦る。


『簡単??』

『ああ。確かにバスケは小さいと不利だよ。だけどスピードとテクニックを大きい人より何倍も、磨けばいい。』

『なるほど……』
『でも一番大事なのは、』
『大事なのは?』
嵐の父は大きな手で二人の小さな頭を撫でながら言った。


「絶対に勝つという気持ち。」


そう口にした瞬間的に未茉は剥き出しの闘争心で一気にゴール前へと加速した。

「すっげースピード!!!」
エマがぴたりとすぐ側にくっついてくが目にも止まらぬ早さで、中へと突進するかのように中へと切り込んでく。

「エマ-ー勝負だ!!」

名古屋の選手二人に伸ばされる手をハンドリングで交わすも、
「止めるわよ!!」
ジャイ子は必死に食らいつく。

「な…なんてスピードなんだ!!」
「ス…スピード落とせ白石ぃぃい!!あぶねーぞ!!」
度肝を抜くスピードドライブにベンチからもコート上の選手からも叫ばれるが、

「気持ちなら誰にも負けねーー!!!」
そう叫びながら、高くジャンプしてラインから体も足も出るも、宙を舞うボールをリングへと片手で放り投げた。

「ボールは……?!!!」

洗練されたシュートのように-ースパッと鮮やかにネットを揺らした。
「はぁはぁ……」
あまりのスピードと止まらない足にエマはラインを割る前に追うのを止めていた。

ボールがネットを通過したのと同じくらいにもちろん勢い余って、ジャイ子もろとも激しく壁に体全身を未茉は打ち付けるも、

「よっし。決まった…!」

えへへっと未茉は息を切らし床に寝そべりながらブイサインをし、満足そうに微笑んだ。