未茉のシュートはただのシュートではなかった。
点を決められることは大したことではない。
ただ、「日本一」の看板を背負う名古屋第一のプライドを確かに傷つけるシュートだった。


「ウォームアップも終わりだよ!」
インターバルでは名古屋のキャプテン4番が口を開くと、コート上の四人は力強く頷いた。

「本気で行きますわ。」
明菜がリボンをキュッと結び直すと、
「ジャイコ・・・。マジでその顔と体型に似合わないキャラとリボンどうにかならないの?気が抜けるわ。」
「ひ・・ひどいっ!!キャプテンまで!!!」
キィイッ!!と取り出したハンカチを加えながら明菜は涙を流す。

「……」
一人だけ別次元の空気を醸し出すエマはただボールをつき、無表情で眺めていた。

「さて名古屋本気モード全開のスイッチが入ったな。」
ざまぁみやがれ明徳と言いながら不破はニヤッと微笑んだ。

「エマは全然本領発揮してないからねー。しかし、いつも無表情だよねあの子。クラスでも浮きまくってるし…」
「ばか。エマが本気出さなくても他の四人が黙ってねぇだろ。」



試合は気合いを入れ直した名古屋のスローインから再開された。

ビシッ-ービシッ!
スピードある高いパスが二回通れば、ゴールめがけて明菜が勢いよく詰めよってタップシュートを決める。

(沈められる…)
さっきよりも増したスピードにゴール前で立ちは矢野は思わずその迫力に一歩も動けず

……ドンッ……!!

「矢野!!?」
腰を着いてしまった矢野に桐谷はファウルじゃないかと審判を見ると笛は鳴らない。

-ーダンッ!!明菜が点を決め着地をすると、腰を着いてしまった矢野の体が地響きで揺れる程だった。
「……」
ゴクッと息を飲む矢野に明菜がどや顔で見下ろしながら立ち去った。

(鳴らなくて当然よ。自ら恐怖で尻餅をついてしまったんだからな。)
名古屋のキャプテンはフッと微笑みながら走りだす。

(マジになった明菜と私がゴール前に飛び出して怯まない女などいない。
体格もパワーも高さも男にだって負けない。さしあたってうちに唯一同等に戦えるのはこの白石だけだ。この女さえ押さえればいい。)