「さて。そろそろ一点取りましょ。」
「…白石!」
力強い未茉の言葉に息を切らしながらも前原は気づくことがあった。

(そうだった…白石はまず落ち着いて相手のプレーを見る傾向があった。そこからどう対抗するかゲームメイクしてく。)

いつもどんな時でも冷静だった前原でさえ日本一とのプレーにすっかり冷静さをなくしていたが、未茉の冷静さに本来の自分の落ち着きを取り戻していった。

「…お、勝負に行くな。」

顔つきがかわった未茉を見て翔真は頷いた。




「うちのディフェンスは越えられない。白石、いくらお前が天才でもな。」
原監督はどや顔で未茉を見るも、

「大丈夫だぁあああっ!白石いつもみたいに適当にカッコよくシュート決めてきてくれぇええ!!」
その隣では今宵の飲み会でカッコよく語りたい新米が原監督がたじろぐ程の大声を出し手振り身振りで応援する・・・

「まだ邪気が…」
キタローは余計な邪気をキャッチした・・・。


ハイポストで受け止った矢野は、未茉へとパスを送り、腰を低く落とし緩急を描くように切り込んでく。

「なっ……!!!」
「低いっ!!!」
「なんだあのドリブルは!?」
明菜も名古屋のディフェンス陣は低さと早さと動きの読めないターンにブロックのタイミングを逃し、翻弄されてしまう。

「嘘だろ外からシュートじゃないのか?!勝負するつもりかよ!!」

「小さい頃からでけぇ奴としかやってねぇーんだよ!!!舐めんな!!!」

未茉はそう言い放ちながらジャンプフェイクを二回入れてから飛ぶと、
「何っ…!?」
ブロックに来るジャイ子をジャンプしたまま両手で高く持ち合げて、一瞬左手を放しすり抜けて片手に持ちかえて物凄いスピードで高くへ放り込む。


「はっ…!?入ったのか…」
早すぎて見えないが確かにネットは潜っていた。
「「入ってる…!!入ったぁあ!!」」

「「なっ……!!!」」
名古屋第一という強豪を率いて15年……日本一を相手にトリックシュートを平気で決めてしまう未茉に思わず原監督は立ち上がり目を奪われ声も出なかった。

「「うわっぁぁぁあ…!!!」」
「さすがっ!!!」
「っーかすげー!!!」
「凄すぎる!!白石マジやべぇ!!ヤバすぎる!!」
鳥肌全開だと言いながら明徳応援組はまるで勝ったかのように大騒ぎして抱きあう。

「すっげーなぁ。」
これには翔真も脱帽し拍手を送る。