ボールを手にした未茉は、臆することなくゴール前へと切り込んでいった。

「アイツ!!強引だぜっ!!マジかっ!!?」
「あの鉄壁のディフェンス陣に切り込んでくのか!?」
「いや!!ありゃ突っ込んでってるぜ!?」
嘘だろ……と一同は未茉に視線を送る。

エマとの一対一の勝負に出そうとするも、目の前にはジャイ子が視界いっぱいにやってくる。
「……」
ジャイ子のマークにつきフリーになった矢野に未茉はゴールに向かってジャンプした空中でノールックパスで出すも、

-ービシッ!!!

「なっ……!!?」
間一髪でエマが矢野の前に立ち、パスを奪い取られてしまった。

そして物凄い早さでエマはゴールへ向かったのは、見えたが……

「……!?」
未茉が振り返って走り出そうとした時にはもうすでに、エマが軽々とネットを揺らした後だった。
ほんのわずかな瞬きの間にハーフコート以上走りゴールを決めていた。


「マジで神がかってる……」
「なんだ…あの早さ……」

信じられないと立ちたくもない鳥肌を押さえるように明徳部員達は両腕を押さえた。

「すげぇ…!マジか。」
驚きを隠せない未茉にジャイ子はどや顔で
「エマは五十メートルなら六秒台よ。」
「六秒!!?」
「女子高校生最速よ。」

「アメリカとジャマイカのハーフだっけ?」
「そりゃはえーよな。ジャマイカって陸上王国だろ。」
「加えてあのジャンプ力か…」
あっけに取られる明徳組の連中を尻目に嵐は鋭い視線でコートの上の未茉を見つめ、

「もういいだろう。さぁ、取りに行けよ。」

ニッと面白そうに腕を組ながらコート上の未茉にに言うと、
「え…」
明徳組は不思議そうに一同顔を見回す。

「アイツは-ーここから動く。」