ピーッ!
「アウトオブバウンズ!」
矢野にパスをするも、ジャイ子に手を出され、ラインを割ってしまった。
「クソ…」
パスセンス抜群の前原がバスケ人生で初めて怯んだ。
(いいパスだせって?そんなの……)
不可能と口にしたくなるも、キャプテンである自分を奮い立たせた。
ディフェンスを交わすのがやっとで常に狙われているかつてない焦りと膠着状態に前原の額には冷や汗が滴り落ちていった。
「鉄壁のディフェンスだ……」
見ている明徳ベンチからもそれが分かるくらい完璧なディフェンスだった。
「足止まるな!!動け動け!!!」
「前原さんっ!!自分で行け!!」
時間を確認し未茉が思わずそう声にした時に、止まっていた足を動き出すも、
「……!!」
目の前の圧倒的な高さと威圧感はまるで暗闇だった。前原の足は完全に止まってしまい、
「前原さんっ!後ろ!!」
-ーパシッ!!と名古屋のガード四番に後ろから取られ、物凄いスピードでゴールに向かわれる。
「待てぇ!!」
未茉が走り抜けるも簡単に置き去りにされてしまい、明菜達も物凄い早さでゴールへ向かうも、
「なんて早さだよ!!一歩がでけぇっ!」
名古屋の四番が一人で呆気なく決めてしまう。
「子供と大人並みの体格の違いだぜ…」
明徳女子も決して遅い方ではない。スピードもある方だ。でも名古屋は比べ物にならない。
「これが日本一か……」
(誰か一人が試合を決定づけるエースではなく、五人全員がエース級の巧さと強さを持つ。)
「それでこそ伝説の不敗神話を誇る名古屋第一女子だ。思い知ったか白石。」
未茉に名古屋を蹴っ飛ばした悔しさを少しでも肌で知ってもらおうとした原監督はニヤリと満足げな笑みを浮かべた。
「運が悪かったな。今年の名古屋はバスケ部創立以来の最強の呼び声が高いんだ。天才一人じゃ勝てるわけあるまい。」
(ここに白石が加われば間違いなく史上最強のチームになっていたのになぁ……。)
それでも未だに未練がある原監督であった。
“やめとけ自信なくすぜ。”
不破の言葉が今になってズンッ……と胸の奥へ鉛のように沈んで身動きが取れない程、前原には身を持って感じていて、
「はぁはぁ……」
震える自分の膝を沈めるように押さえる前原に未茉はポンッと肩を叩いた。
「あたしがガードやります。」
「……!大丈夫よっ!バカにしないで!!」
見くびられたとは思いたくない前原は、その手を振り払うも
「一回エマを見ときたい。」
「…!?」



