「に、に、に、日本一の名古屋第一と試合するだとぉ!?」

呼び出されたあげくに急な展開に驚く野村監督はベンチでひっくり返りそうな声を上げている。

「えっ!!本当にぃい!?」
だが、その反面喜びの声をあげる新米斎藤は、直ぐ様名古屋のベンチの女性コーチ陣の元へとしっぽ振ってく。

「ダメだ!!やめるんだっ!!!」
「さー、行くよ。」
「いーよ。アップオッケー。」
反対する野村監督に女子は誰も聞く耳を持たずに無視してどんどんコートへ進んでく。

「最後の夜にぜひ軽井沢のバーにでもぜひっ!!僕と一緒に今日の試合を語り合いながらっっ!」
そして熱心に婚活に勤しむ斎藤。

「そんな試合、メンタルが……!!」
さすがの野村の長い監督人生の中でも名古屋を打ち砕す作戦などなく、余りにも急すぎる試合に自分のメンタルの準備もなく、

「メンタルが・・・!!」
手を掲げて口をパクパクさせがら小さくなっていく野村に目もくれず、すでにコートでは整列を始めた。






「やばい……なんかこっちがドキドキしてきた」

「ほんと…この高校バスケ雑誌に載ってるこの日本一の人達がうちのバスケ部と試合するなんて」
それを一年女子と二年女子の補欠達が震えながら固唾を飲んで見守る。

「まぁボロ負けだろーけど、どこまでやれるかが見物だな。特に白石が。」
床に偉そうにしゃがんだ不破がそう言うと、

「…白石は絶対に負けない。」

キタローが言い切るように言い返すと、
「ぅわっ!!!喋った!!!」
ビクッとする不破は驚くも、
「ああ。ぜってぇー負けねーよ。アイツは。」
同調した結城と三上も強く頷き信じる。

「すげー愛されてやがんな。」
面白くなさげにふんっと鼻息を荒くする不破に翔真はニコッと微笑み、
「だから言ったでしょ?可愛いって。」
「!!男が女にノロけた顔すんなっ!!!」


「よし。新生明徳行きますか。」

未茉の一言に円陣を組もうとするも、
「やだよ。円陣。」
「また…前原さん」
「あたしもやだ。」
「矢野さんまで・・!」
せっかく打ち解けつつもあるという矢先に酷い・・・と涙目になる未茉に、

「行くよ。」

前原新キャプテンが未茉の肩を抱き、
「……!」
無愛想な表情の矢野が片方の肩を抱き、未茉は驚くも満面の笑みでお腹の底から声を出した。

「「明徳女子!!!ファイオー!!!!」」

円陣を組んで大きな声を体育館に響かせた。