「エマ、本当にやるのか?」

名古屋第一の原監督が苦笑いを浮かべながら確認してきた。
「白石はともかく、明徳なんて相手にもならないぞ。」
ボソッと小声で忠告をすると、
「分かってます。」
「……!じゃなんで?」

「嵐が……」
「ん?」

「キングが認めた天才少女だから。」

どれほどのものなのかを確かめたいといった表情のエマが、嵐と話ながら笑う未茉の横顔を見ながら頷いた。


「…白石、あんたマジでやんだ?」

いつもと同じく冷たい口調の矢野が二年を引き連れてそう尋ねてきた。
「……」
前原は無言だったが、“プライドが傷つく”といった不破の言葉を脳裏にかすめていた。


「やるやるっ!!新生明徳の初試合がインターハイ優勝相手なんて最高じゃねっ?」

ニッと挑発的に微笑む未茉に誰一人乗るものはいないと思われたが、

「東京ベスト2で満足してんの?」

新生、前原キャプテンが黙りこんだメンバーに尋ね、
「仮にインターハイ出場しても、全国で名を残せなきゃ全国へいく価値もない。」
すでにバッシュの靴紐を結び直し、スタンバイオッケーと言わんばかりの前原が立ち上がりボールをそうこなくっちゃっと親指を立てて微笑む未茉に、
「敬語使えよな!!ったく!!」
「いってぇえ!!」
頭をどつかれる・・・。