「おい。」

エマを連れて未茉の元に戻ってきた嵐は、睨みながら翔真の方をチラッと見て、

「未茉がコイツに相応しいか?笑わせんな。未茉に相応しい男が俺より弱えーわけねぇだろ。」

「……!」
目は口ほどに語るーー。
嵐の気迫ある緊張感漂う牙を向けられた翔真は、もちろんその心情を手に取るように分かっていた。


(…未茉に相応しいのは、小中高と日本一のタイトルを取り続けた全国無敗神話のこの俺様だけだ。)
その心の言葉を嵐は飲み込みながらグッと拳を握りしめ、

「エマ。明徳と試合するよな?」
「…うん。」
この夏、日本一のタイトルを取った二人が並んでエマは静かに頷くと、

「「「!!!」」」
そのただならぬオーラを放つ二人にザワッと周囲が耳を疑うような言葉と、
「え……つーか嵐!?」
「バスケオブキングのっ!?」
「隣はバスケ界の女神エマ!?っーかバスケ界トップ2まんまじゃねーかっ!!」
「「「なんでここにいるんだ!!?」」」

あまりの存在感とバスケ少年少女なら誰もが夢見る高校最高峰エース桐生嵐に、結城や三上を始め、明徳部員はもちろん。

「桐生だぜ……」
インターハイベスト4で破れ、夢の福岡との対戦にならなかった名古屋男子達も憧れの眼差しを注ぎ、
「おい!バスケキングの桐生だぜ!」
「マジかよ本物!?」
「あのオギタクとCM出てた奴だろ!?」
合宿所にいたテニスや水泳部員達もその知名度ある桐生見たさにスマホを向けて集まってきて、

そんな見られてることを知ってか知らずがーー

「俺は見せモンじゃない。」

嵐は勝ち気な笑みを浮かべ未茉の肩を抱き寄せながら、

「見せてくれんのはコイツだぜ?」

ニッと上目使いで口角をあげる嵐に、

「はっぱかけやがって。嵐。」
「お前にはこんくらいのプレッシャーどってことねぇーだろ。」

そんな息の合ったやりとりを見ていたエマの寂しそうな瞳には楽しそうに微笑み合う二人の姿が映った。