「コイツは俺が認めた唯一の天才だ。」

未茉の肩を抱きながら自慢気に言い放った。

「お~なんか照れんなぁ~!」
微妙な空気感を全く分かってない未茉は笑いながらはしゃぐと、嵐の肩に手を抱かれ前をさっさと歩いてく。

「ぅおいっっ!!」
ムカッとした不破は隣の翔真に大声でつっかかり、
「お前の女だろ?!!なんで能天気にボーッとしてんだっ!!桐生に肩なんか組ませて!!」
「だから俺の女じゃ…」
「悔しくねぇのかっ!?むかつかねーのかよっ!!」

「…ムカついてないように見えます?」

「……!」
その返しに驚き表情を見るも、いつもとなんら変わりのない澄まし顔だったが、内心穏やかではないってことを知り、少し安心はした。

「なんだ…お前も人間なんだな。」
「まあ、お化けじゃないですよ。」
「てめぇ・・・喧嘩売ってやがるのかよ・・・」
「あはは。」


昨日までの試合続きの張り詰めた緊張感を払拭するかのように体育館では雑談混じりで監督指導の元、名古屋第一女子がストレッチをしていた。

「あ、やってるやってる。」

未茉がひょこっと顔を覗かせると、エマは隅っこで相変わらず一人の世界に浸るようにイヤホンで音楽を聞きながら体を伸ばしていた。

「おい、エマ。」

そんなこともお構いなしにズカズカと体育館に嵐が上がると、
「えっ……桐生っ……!!?」
「なんでここに…?」
その思いもよならい登場にザワッと名古屋女子にざわめきがおこる。

「エマ。」

がに股のまま屈んでエマのワイヤレスイヤホンを取ると、遮られた自分の世界に不服そうにエマは顔をあげるも、嵐の顔を見て一瞬にして笑顔に変わる。


「「えっ!?笑った!!?」」

二人のやりとりを遠目から見ていたららと不破が思わず声を揃えて驚いた。