夕焼けをバックに指先でボールを回しながら鋭い視線で睨み付けるように嵐は未茉に尋ねた。


「何やってんだ?お前」

「キスしてた。」

見て分かんないのか?というくらい恥じらいひとつなく平然と答える未茉に

「彼氏か?」
「ううん。」
「なんだ遊びか。」
それを聞いた嵐はボールを地面にバウンドさせてどこか安心したように面白そうに微笑むが、

「遊びではねぇーよ。」
「なんだって?」

「てかごめん、未茉ちゃん。」
突然会話を始めだす二人のテンポのいいやり取りの間に一回割って翔真が入り、
「彼は…」
紹介してほしいと言わんばかりに尋ねると、

「覚えてねぇの?不破が言ってたけどお前戦ったことあんだろ?桐生…」
そう未茉が言いかける途中で、嵐は物凄い勢いで翔真の胸元をつっつき

「お前、名古屋中湊のだろ?なんで自分がボロ負けした相手の名前も顔も覚えてねぇんだ?」

いい度胸してんじゃねーかっと顔を見上げながら言うと、
「覚えてますし、名前も顔もCMとかポスターで見てます。ただ未茉ちゃんとどういう関係なのかなって…」

「兄弟みたいなもんだよな?なっ?嵐!?」
にかっと未茉が歯を見せて笑い嵐の肩を組むと、
「おー」
やっと翔真から顔を背けた未茉に返事すると、

「久しぶりだな!!!嵐!!」

ギュッ!!!と勢いよく嵐に抱きつくと、
「おー!!ホントだよっ!!」
やっとつり上がってた眉毛を下げ未茉の背中に手を回し、ポンポンと叩きながら目を垂らして嵐はあどけない子供のような笑顔を見せ、
「よっ!よ!」
とパチン!パチン!と二人の習慣なのか手を合わせ叩きながら笑い合う。

(兄弟・・・・)
目の前でその光景を見ながら複雑な心境の翔真は
(一体、兄弟分が何人いるんだ・・)
星河兄弟の存在を思い返していた。