深く押し込まれるように絡まり合うと、自分の中でまたもっと…って感情が込み上げてくる。
それは何か物足りないくらいもどかしく焦りに近い。
(キスいっぱいしたのに、まだ足りない。
いっぱいこうして抱き合ったのにまだ足りない。)
むしろ、すればする程、足りなくなっていく気がした。
(ららが言ってた。誰にも取られたくなかったらーーって話。)
ようやく分かった。
翔真を自分のものにしたいって。
自分だけのものにしたいって。
その気持ちが恋だって。
この気持ちこそが……
「好き。」
唇を離して、おでこをくっつけてゆっくり互いの顔を互いの揺れる瞳に映すように見つめ合うと、自然と溢れた言葉を伝えていた。
「うん。」
知ってるよ。って言わんばかりの瞳で翔真は頷く。
「なんだよ自信ありげによー!嬉しそうな顔しやがって。」
「あはは」
でもそんな嬉しそうに笑う翔真がまたたまらなく可愛く思えると背後の鋭い視線に未茉はようやく気づいた。
「え!?」
「え?」
公園の入り口の遠くに視線を見上げて驚く未茉に翔真も驚く。
「よぉ。何やってんだ?お前。」
この夏のインターハイ全国優勝校の福岡高校のチームリュックを背負い、バスケットボールを片手で回しながら睨みを飛ばすその男こそーーー、
「嵐!!?」
日本のバスケット界の夢と希望を華々しく背負って立つ福岡高校の一年ながらのエース桐生嵐。
若干16才にて、世界中の高校生で彼を上回るバスケプレーヤーはいないとNBAのコーチから云わしめられ将来を約束された雲の上の存在ーーー。