「湊っ!」
夕方、ららが体育館で練習終わりにシャワーを軽く浴びに行こうとする翔真を呼んだ。
「ねぇねぇ!シャワー浴びたらすぐにテニスコートの横の公園ベンチに行ってみて!」
「え?」
突然何を言い出すのか全く分からず目をぱちくりする翔真に
「いいからっ!ねっ!?」
「うん…?」
「湊が超ー喜ぶ姿が見れるよ!」
ふふっと嬉しそうに急かすららは戸惑う翔真にそう促した。
(……なんだろ。)
ららのあの笑みに自分の喜ぶものと言ったら未茉のことには違いないが、想像もつかずシャワーを浴び、指定された場所へ向かった。
……ダンダンダンっ!!
合宿所に宿泊する高校のテニス部が打ち返すボールの音の横の公園では、未茉が真剣な表情でドリブルを打ち付けるその姿はいつもとは違うシルエットだった。
「かわいーなぁ。あの子」
「パンツ見えんじゃね?」
「しかしすげーうまくね?…プロか?」
テニスそっちのけで未茉の姿に顔を赤らめながら釘つけになり、フェンスを覗くテニス部男子を尻目に
(もういっそのこと世界中の男がいなくなってしまえばいい・・・。)
そう本気で思うくらいムッとしながら翔真は公園に入ってく。
「未茉ちゃん。」
「おう。」
公園に降り注ぐ夕焼けに照らされながら振り向く未茉の姿はいつもと同じはずなのに違っていた。
「スカート……!」
「見たかったんだろ?」
ニッと微笑む未茉は驚く翔真にボールを投げ、
「鼻の下伸びてんぞ。」
そう言われ思わず翔真は鼻を押さえると、うひゃうひゃっと笑われてる。
「かわいー……」
膝上のギンガム柄のフレアースカートに黄色のブラウスシャツに緩くふわっと巻かれた髪は、まるでいつもの彼女からは想像つかない程の別人だった。