「参ったな。昨日は東京で試合したし移動で朝早かったから彼女達も疲れているだろうし。」
その後ろからは名古屋第一のジャージを着て玄関に荷物を置き始める女子達の姿が現れ、

「おい、東京の明徳女子がお前らに試合申し込んできたけどどうする?」

監督が移動疲れで気分の重そうな女子達に尋ねると、
「明徳?東京のどこですか。」
「疲れたー。お腹すいた。」
やっと到着した気の抜けた彼女達はまるでスルーするように玄関を上がり、未茉の前を通りすぎてく。

「デカッ……!!!」

思わずその集団に圧倒され絶句してしまった。
全員が全員、180センチ以上の女子達で中にはBIG3と変わらないくらいの190センチ台の女子もいて、未茉の姿など隠れてしまうくらいだった。

「全国から寄せ集められてんだろうけど、高校でこんなでけぇ女子がこんなにいんだな!!」
感心と驚きの声で未茉は見上げると、バスケをやるために生まれてきた身体つきは羨ましさしかなかった。


「エマ。何してんの?置いてくよ。」

一人の部員が振り向き、まだ玄関でイヤホンで音楽聞きながら軽井沢の景色が物珍しいのか写メを撮ってるエマを呼ぶも、自分の世界に入ってしまってるのか返事はない。

「マイペースだな。アイツは」
「ほんと。昨日の試合でこっちはバテバテなのにエマちっとも疲れた顔見せないし。」

「……」
一人明らかに空気感の違うエマに未茉は興味深そうに近づき、

「お前がエマか?」

ひょこっとエマの背後から覗きこむも、
『♪♪♪~』
イヤホンから溢れる爆音の音楽に合わせてリズムを取るようにスマホで写メを撮るエマは全く気づかない。

スマホの画面には未茉の変顔のアップが映し出され、エマは静かに驚いた。

「あははっ!驚いたか!?エマ?」

「…yes。」
驚くエマはイヤホンをとり未茉に頷く。
「えっ!?英語!?参ったなぁ…喋れないよ。」
「日本語喋れる。」
「なんだっ!喋れるんじゃん!勘弁してよー!あたし英語超苦手なんだからっ!!」
「なんか…日本語も苦手そう。」
「あはははっ!そうその通り!」

初対面とは思えぬ無邪気未茉の笑顔に、真っ黒な肌からより強調される白い歯を見せてエマは釣られるように笑った。