「試合でもこんな息きれねーよ…マジ。きっつー。」

もうギブだ。と激しい息切れの中、床に不破は腰をつき、翔真にタオルを投げ渡す。

「勝てねーなぁ。破壊王。」

はぁはぁっと笑いながらムカつく素振りを見せ翔真もしゃがみこむ。
「ばーかっ!この全国スターの俺様がお前に負けてたまるかっ!」
「あははっ。はい。」
こんな時もおっとりと笑う翔真を見て、同い年じゃなくてよかったと心底思った不破は、

「どうした?」

軍配はどちらにも上がらなかったが、やはり不破の経験の差が光り腑に落ちない横顔をしている翔真に気づいた。

「お前が俺に勝負を挑むなんてなんかあったんだろ?」

「……勝ちたい相手がいて。」
「!珍しいな。お前が」
「不破さんみたいなエースでチームを引っ張って全国に行ってる人です。」

「チームじゃなくて個人で勝ちたいとかお前そんな熱いこという奴じゃねーのに。」
「……」
「よっぽど強いのか?そいつ。」
「不破さんと互角くらい。」
「ふーん。」

ポンポンと片手でボールを空中に投げながらキャッチする不破に、
「お前とも互角ってことか。」
「いや…」

「じゃあ、今のお前を越えられる前に倍練習しねーと。」

「……!」
「きっとそいつも今、お前を越えようと倍練習してんな。」
ふんっと少し面白くなさそうにボールを回しながら笑うと、

「…不破さん。」
「あんだよ。」
「出会ってから初めて胸に響く言葉ありがとうございます。」

ーーバシッ!と床にボールを叩きつけ、
「おいっ!こらてめぇ!」
「あはははっ。」

「ハッ。おい、まさかとは思うが・・・その相手もあの女(白石)のこと好きとかつーふざけた理由じゃねぇーだろうな?」

「嫌だなぁ。不破さん。」
クスクスと笑う翔真に
「だよな?よかっ…」

「全然ふざけた理由じゃないですよ。」
「あ・・・・?」