「ふぅー危ねぇ危ねぇ。」

廊下に出た未茉は冷や汗を拭きながら本当の自分の部屋へと歩き出す。

『熊からは逃げられたか?』
「おう。余裕でな!」
『その熊、羊頭だろ?』
「えっ?!」
『ふーーん。』

「り…リスってさっ!軽井沢にいそうじゃねっ?!」
『さぁな。熊がいるならリスくらいいるだろ。』
「!!」
話を変えようとしたら裏目に出た・・・!!!


『俺との会話を聞かれたら焦るような仲に発展中ってことだな?』
「う・・・」
(ず・・図星すぎて何も言えない。)
女子部屋に戻ってきて未茉は思わずスマホを握りしめたまましゃがみ、

「…あたし今は翔真が」
『なんだよ。』
(いや……電話でこんなこと言えるか。ましてや健兄に。)

『とりあえず軽井沢から帰ってきたら会うか。』
「ん。」
『ってもこの前会ったばっかりじゃねーか。でもお前の誕生日どっか連れてくって約束したしな。』
「そうだ!!うんっ!わぁーいっ!!」
『どこ行きたい?』
「どっかっ♪」
『どこだって聞いてるんだろ?』
「あっそっか。」
『っとに・・・お前はー。』
ポケッとする相変わらずな未茉に健から笑みが溢れた。

「あ、笑った。」
『え?』
「健兄、少しは元気なった?」
『なったよ。虫の写メも見たし、未茉の声も聞けたし。』
「でしょ?今日はね、出るって噂のスポットで夜肝試しするからお化けの写メ撮れたら送るよ!」

『おー。それは虫より見物じゃねーか。』

(笑った声が聞けてよかった。)
インターハイ敗戦から負けずに前を見てる健にホッと胸を撫で下ろし、電話をきった。