「み…湊でしょ?あれ」
「なんだここ男女の露天風呂が壁一枚で繋がってるのか……」
ヒソヒソと二人が小声で話すと、

(小さい声だけど…なんか声が違うような…でもこんな時間に風呂なんか誰もいないよな。)
露天風呂沸いてたね、と確認しにきた翔真が女露天風呂から聞こえた声が未茉だと思って呼んでみたが、

「未茉ちゃんじゃないの?」

しぃ・・・ん。

(反応ない・・・。)
彼女なら間違いなく元気な声で返事を返してくるであろうから、違うのか。と露天風呂に浸かろうとした時、


「み…湊か?」

「!!?」
女露天風呂から聞こえてくるはずのない野太い男の声に呼ばれ、ザバッ!!と水しぶきを立てて翔真は驚き立ち上がった。

「え……誰ですか?」
「俺だ…橘だ。」
「たっ…橘さん!?」
おずおずと名乗る橘の声に耳を疑うが、

「とりあえず何も突っ込まずに教えてくれないか?」
(何も突っ込まずって・・・)
この状況で…突っ込むとこしなないだろ。と思いつつも、
「・・・はい。」
「この壁伝えばそっちに行けるか?」
未茉がこの壁をよじ登って結城達に攻撃していたことを思い出し、「来れますよ」と答えた時、

「ん?空かない!!」
ガチャガチャッ!と未茉は露天風呂への扉を開けようとするも、前原に押さえつけられてる為空かない。

「ちょっとぉー!開けてよ!!意地悪してんの誰っー!?」
「し…白石… っ!!ちょっと待ってて!!」
「ん?その声は前原さん!?」

(・・・・!!!)
その聞こえてきたやりとりになんとなくとんでもない状況を汲み取る翔真。


「いいから早く行って!!」
扉を力づくでも押さえつけながら橘に‘行けッ’と指示する前原に、

「ああ。」
よじ登って足をかけて、素っ裸の無様な格好で露天風呂の塀をサルのように乗り越え現れた橘は、

「よぉ翔真……」
見られたのがお前でよかったと苦笑いしながら降りてきた彼に、

「橘さん・・・。とりあえず突っ込みどころ満載ですけど・・」

頭を抱えながら呆然と立ち尽くす翔真であった。