「あははっ!もー止めてよっ」
水中から未茉をお姫様だっこで持ち上げられて、
「参った?」
「参った!もー参りました!」
翔真の肩に両手を回し笑いながら降参すると、
「ん。」
濡れた髪に触れながら腕を回して引き寄せおでこをくっつけて彼女の存在を確かめるように見つめ合おうとするのは、翔真の癖だった。
「……」
急に無口になった。
暴れていた水面も穏やかになってく。
ぴちゃっ…と体からしたり落ちる水が響く。
ちょうど雲に隠れたからか……月明かりが消えて夜のプールは真っ暗になったけど、互いを見つめる目や、頬は、唇は、
すぐ側にあるって分かる。
パシャ……
翔真の腕が動く水音がやけに耳に響く。
「なぁ…翔真」
「ん?」
「キスするかも。」
その予告に翔真が目を閉じたのが分かった。
濡れた手で彼の両頬に触れながら、そっと唇に優しく自分の唇を運んだ。
「……こんな風に」
目をゆっくり開けながら未茉は話した。
「こんな風にしたいのは、翔真だけだから。」
いつもより高い目線で少し視線を下げながら翔真の髪に触れながら見つめる。
「心配してくれた結城に嘘つかせちゃったんだけど、本当は昨日あたし早乙女と会ってて。」
「うん。」
「でも本当に…」
どんな言葉で伝えていいのか分からなくて、言葉を探してる間も、ちゃんと見つかるまで待つ優しい目で見つめ返してくれるその目から離れられなくなりそうだ。



