「どんな悪いことする?」

‘悪いこと’そのフレーズは子供のイタズラみたいでなんか興奮する未茉は翔真の腕を引っ張り、真夜中の合宿所をそっと歩いてく。

「そういう悪いこと・・?」
がっくり肩を落としながら歩く翔真は所詮彼女の考えることはこういうことだよなぁと悲しく思った。

「なぁっ、ここで新米寝てんのかな?」
教員宿部屋を見つけ、未茉は悪巧みな顔を浮かべ、
「ピンポンダッシュでもする?」
「勘弁して・・・」
「えーいーじゃん!せーのっ!」

「嘘だろ!?待っ」
ピンポンピンポン!!
翔真の言葉むなしく、未茉はチャイムを連打して
「早くっ!!」
あははははっと笑いながらダッシュする。

「なんだ?!!」

案の定、ずっと後ろから扉の開く音と新米斎藤の声が廊下に響いた。

「あはははっ新米の奴、絶対間抜けな声してたっ!」
「やべー。練習よりダッシュはえ……」
200メートルは疾走したであろう二人は行き止まった合宿所の廊下で座り込み寄り添いながら息を整える。

「この扉なんだろ。」

部屋でもなんでもなさそうな鉄の扉を前に未茉は覗く。
「悪いことはもういいから帰ろ。」
どっと疲れた翔真はそう促すも、聞く耳を持たずに扉を開ける。

「あ、開いたっ!」
「え・・・」
勝手に中へ入ってく未茉に仕方なく着いていくと、

「足元ヌルヌル……」
滑りそうだから未茉はスリッパを脱ぐと、
「あっ!シャワーだ!」
上をみると盾状にいくつものシャワーが取りついてあり、この消毒の匂いには覚えがある。