「ちょうどいい時間なくて一時間前くらいかな。」
「えっ!で、7時に帰るの!?軽井沢滞在時間三時間くらいじゃん!!」
「うん。そうだね。」
それでも満足そうに微笑む早乙女に、

「マジか。どうしょうか!?どっか行きたいとこある?!」
「行きたいとこ?」
「だってせっかく三時間の為に来たんだろ?!有効に使わねぇと!!」
一年女子が持っていた観光ガイドが部屋にあるから取りに行こうかと思い立った時、

「違う違う。」
早乙女は微笑みながら手を振り、
「やっぱりあんまり理解してなかったね。観光しに来たんじゃなくて、一時間でも二時間でも白石さんと過ごしたくて来たんだ。」

だから場所はどこでもいいんだ。と笑う彼の真っ直ぐな瞳にようやくその意味を理解した。

「ちょうどね今日は体育館整備があって部活も休みだし、インターハイから帰ってきてやっぱり少しでもいいから会いたいなって気持ちが強くて、会えたらラッキーくらいの気持ちで来たんだ。」

「えっ!?凄い!!」
「うん。自分でもこの行動力に驚いてる。」
「なんだよ。金かけて別にここまで来なくたって言ってくれれば東京戻ったら会いに行くのに!」

「そうだけどほら、思い立ったが吉日って言うから。」

「うんまぁ、確かにな。」
「しかも本当に吉日だった。」
オフだからか眼鏡をしてさらっとした髪を靡かせながら笑う早乙女に、
「お前って軽井沢がよく似合う男だな。」
「え?」
「なんかーこうーほら、爽やかな自然の中からの木漏れ日みたいな感じでシャンプーのCMとかに出てきそうだよな!」
「ごめん白石さん。全然言ってる意味理解できない。」
「えー??」