「ごめん急に立ち上がったから目眩…」
「大丈夫。」
「?」

「ちょうどこうしたかったから。」
そう言って自分の胸へと未茉をぎゅっと抱き寄せる。


(あ……またドキドキ……)

触れられると心臓が翔真に反応してまた大きく叩き始める。
さっきまでムカムカしてたのに、落ち着いてく……けど、ドキドキし始める。

あのとろけそうな甘い甘い感覚がまた全身を駆け巡ってく。

一分でも一秒でも長くこうしていたいって気持ち、初めて知った。


「……翔真」
勝手に手がその背中にしがみつくように抱きつきながら目を閉じて名前を呼んだ。

「うん。」
返事のように撫でるまだ少し濡れた髪に触れてくる。

「なんでもない。」
「ん?うん……」
ふっと意味なく頭の上で笑われた。

なんて言っていいのか分かんなかったのだ。


(好きか?好きでいいのか?
欲しい欲しいってこの温もりが欲しいっていう気持ちは‘好き’で当てはまるのだろうか?

あたし翔真が欲しい。
ずっとこうしていて欲しい。それは好きであってんのかな?)
もどかしい自分の気持ちに正解を探すようにしがみついた背中の手の力が強くなってくと…


「なんのシャンプー?いい匂い……」
くんっと未茉の髪を嗅ぎながら聞いてくる。
「家からトラベルセット適当に持ってきた。貸そうか?」
「ううん。」
風呂あがりのまだ濡れた髪に、赤い頬、いつもより少し艶っぽく見える未茉に翔真は、

「……参ったな。」

「何が?巨乳の話?」
「違うよ・・・。」