「終わった・・・」


テスト一日目の終わりを告げるチャイムと同時にカクンッ……と息耐えるように机へと崩れ落ちる未茉は全生気を吸い取られていた。

三教科のテストはまるで手応えがなかったのだ。
「辛うじて三上大先生が教えてくれた物理のみ空白は少なかった……」

「白石、赤点とったら補習だってよ!夏の合宿には行けねぇなっ!」
「ガーーンッ!!!」
隣から結城が追い討ちをかけるように面白がってからかうと、

「明日もテスト……もうダメだ。死ぬ……。」

「さっ、帰るか。練習もないし。」
「・・お前。練習なくて嬉しそうだな翔真。」

「いや、こんな明るいうちに帰れることめったにないし。未茉ちゃん一緒に帰ろ。」
明るいうちにデートのような下校をしたかったのかウキウキしながら誘う翔真に結城は冷ややかな視線を送る。

「いえ、あたしは三上大先生のご自宅でご指導を頂くことにします。」
涙ながらにバッグを握りしめ、のそのそと三上に続いて立ち上がる。

「・・・!!!」
夢プランが音を立てて崩れた翔真は、三上の肩を抱き教室の隅へと連れてく。


「なんでそうなる?」

「仕方ないだろ。教えてくれって頼まれたんだから。」
「なんで自宅?」
「あんなうるさい女を図書館なんかに連れてけないだろ。周りに迷惑がかかる。」
「だからって」
「大丈夫だよ。うちには母ちゃんも妹もいるし。」
「いや、そういうことじゃなくて。」
「なんだよ・・翔真。俺のこと信用してないのかよ……」
「あんな可愛い子と二人きりじゃ突然魔が差すこともある。」
「ないよ・・俺。絶対。」

小声会議を終えた翔真は振り返り、結城を引っ張ってニコッと未茉に微笑んだ。

「俺らも行くから!」

(やっぱりそうなるのか・・・)と益々うるさくなるであろういつものメンツにため息をつく三上なのであった。