「わりぃー……ちょっと油断した。」
久我原は苦笑いで名古屋ベンチに告げると、「お……おー。」とまばらな返事の後、
「遠慮なんかすんなよ!本気でいけ。」
そう部員達が声をかけるも、
未茉を見つめる不破だけは久我原にかける言葉がでずに、
「……ゴクッ」
音をたてて生唾を飲み込んだ。
(なんだーー、アイツは……彼女は‘上手い’とかそんな次元じゃない。)
ーーキュッ……
(ボールを待ち構える彼女の体勢をみれば分かるーー久我原は抜けない!!!)
「なんて女だ……!!!」
目を見開き、その天才を確かめ震えると、側で座る翔真はそんな不破を見てフッと微笑んだ。
ーーパシッ!!
油断というより、未茉の何度も何度も隙をつくプレッシャーが焦りを生み、
「ーーっ!?あ!」
久我原は手元を狂わされボールを奪い取られてしまう。
キュッーー!
(女の癖になんてすばしっこいんだ!!)
スピードでは負けまいとたかをくくっていた久我原が置いてかれる。
「何やってんだ!!久我原!!!ガードのお前がドリブルカットなんてありえねぇだろ!相手はインターハイにもいけなかった女だぞ!?名古屋第一の名に恥をかかす気かっ!?死んでも取り返せぇ!!」
監督がタオルを地面に叩きつけ叫ぶと、
「おもしれぇ!!奪ってみろよ!久我原」
その言葉に未茉はムカッとして、
ダムダムダムダムッ!!!
あえて止まって低く小刻みなドリブルを始め、相手に取ってみろと挑発するも、
「くっそ…」
「おらよ!」と微笑みその場からやけくそかと思わせるようにゴールへと振り投げるも、
「「!!」」
しっかりバックボードに当てパスッとネットに入れ、
「「!!!」」
「明徳女子を舐めんなよ。」
震えながら口を開ける監督に中指を立てて言い放った。