「よしっ、合宿初日は軽井沢を満喫しつつ軽ーいウォーミングアップだ!!」

森林に囲まれた山々で、虫達もどこか涼しそうに鳴く声が響き渡る中、まずは序の口だと野村監督の横で斎藤がみんなに微笑みながら言うと、
「「いえーいっ!!」」
と部員達の喜びも虚しく、


「・・・何が序の口だ・・・何がっ。」

明徳バスケ部の誰もがヘトヘトになりながら20キロもある広大な山道を走らされ、

「うさぎ跳び10往復だ!!」

「「ゲェーッ!!!」」
聞いただけで吐きそうだとみんな声をあげる中、神社の200段近くある階段をうさぎ跳びして、

「いぇーいっ!!一番ゴール!!!」
未茉はぶっちぎり一番で軽々ゴールをする。

「すげぇな・・・白石の奴・・・」
すでにゴールをして近くの売店で一人アイスを食べて涼しい顔している未茉を‘人間じゃねぇ……’という目でみんな見ている。
(す・・凄すぎる・・!)
ゴールで飲み物を用意していたキタローは尊敬の眼差しで頷く。

「ムッ!」
(おのれ白石め。俺の練習メニューにちっとも音をあげないとは・・・なんというスタミナだ!?)
過酷なトレーニングメニューを考えた新米斎藤が涼しい顔色の未茉を睨んだ。

そう、彼は軽井沢の大人の夜遊びをしたいが為に部員達をクタクタに疲れさせて夜は爆睡させてる隙に遊びにいこうという作戦なのだ・・

(む。邪悪な気が…)
妙な空気を察知したキタローだったが、

「うぉおーしっ!!次はダッシュ200だっ!!」
「「うげぇぇぇ!!!」」
明徳部員の悲鳴は軽井沢の草原にこだまするとかき消されたのであった。