そして一方、明徳バスケ部員達が乗り込む同じ新幹線の別の自由席では愛知からやって来た名古屋第一のバスケ部が偶然にも乗り合わせていた。

名古屋第一高校、全国指折りのバスケの伝統ある名門校だ。今回のインターハイ全国四位の実績を誇るその立役者であり、不動のエースが


「あれ、不破は?」

エースが自由席にはいなくて辺りを見回す部員達は、
「さっき腹いてぇってたからトイレじゃねーか?」
「またかよ。食いすぎか?っとに。」



ブルルルルルッーー!

「嘘だろ・・・・。」

まだ帰ってこないキタローと未茉に新幹線の発車のベルが鳴り始め、さすがにドアの所で焦る翔真はホームに降りると

「白石と北は一体何をしてるんだぁっ!?」
帰ってこない二人に野村監督も苛立ちながらホームを見渡すと、

「あっ!キタローだっ!!」
結城が指を指した先には未茉の荷物を半分持ったキタローが階段を慌てて降りてくる。

「待って!!待ってぇー!!新幹線ーーっ!!!」

うぁーんと大声で泣きながら未茉も一緒に降りてく姿が見え、翔真も監督も皆ホッと安心するも、

「キタロー、白石!!どこからでもいいから乗り込めっ!!」

結城が指示を出すとキタローはすぐそばのドアに荷物を抱えたまま乗り込んだ。

未茉も続いて乗り込もうとした時、「あっ!!」
持っていたお菓子の袋を落としてしまい引き返す。


「やべぇ、あぶねーセーフ!!」

すぐ前の男が乗り込むと新幹線ホームの扉は閉まってしまい、

「ヤバッ!!」

未茉はまだ開いている新幹線のドアに持っていた荷物を勢いよく投げ入れると、

「ぶっ!!!」
その男の頭部には未茉が投げ入れた荷物が命中して、
「いってぇなっ何しや……」
振り向いて言いかけた時、


「どいて!!」
「なっ……!」

未茉はホームの扉に手をかけ、ひらりっとジャンプして閉まっていく扉の中へ着地するも、

ーードンッ!!!ベシャッ!!!

ドアが閉まると同時に車内に飛び込んだ未茉は、

「ギリギリセーフッ!!!」

笑顔で両手を空中で切り、スチャッ!とかっこよくポーズを決めた。