「最近まで世界中の男が全てが敵だと思ってたのが、星河健さんだけになったし。」

「麻痺してんな・・・お前。」
「ははっ。そうかも。」
逆境を楽しむかのように笑った翔真は、

「でも正直、星河健さんにはプレーヤーとしても男としても負けてるよ。」

前に未茉の親友の莉穂に言われた言葉を思い出した。

“健さんがライバルだと知ったら10割の男が身を引く。”
(今なら分かる。そうだろう。勝ち目がないと。)


「…でも、だとしたならば俺はそのたった一人の男になりたいし、越えたいな。」

そのただならぬ決意を固めた横顔に二人は顔を見合せて驚いていた。


「……でも男として言うのは分からないけど、予選ではうち王子には勝ったのに?」
「いち個人では俺は、健さんの足元にも及ばなかった。しかもだいぶ匠さん調子悪かったし、それに俺はあの試合で勝つために残りの試合もう持たなかった。それを肌で感じた。」

「…そうか。」
「想うことは簡単。でも分かってあげられるっていうのはまた別物だな。」

ふとインターハイ予選の決勝の時の健と未茉の入り込めない空気や絆を見せつけられてまだまだだと思ってた。

「未茉ちゃんが好きなのも無理ないと思ってる。いつか越えねーと俺だけを見ろなんて言えない。」
勝負を挑む時の翔真の本気な目に二人はようやく納得し、

「全国MVPの星河健か……。相手に不足ねぇーじゃんか。翔真。」

「おう。」
冬のウィンターカップに向けて力になるように翔真の肩を叩く二人に微笑み返した。


「今日そういやなんで白石誘わなかったんだよ。」
「俺もう嫌だからね。宿題手伝ったり教えたりすんの・・・」
三上が翔真にちゃんとお前が教えろよっという視線を送ると、


「誘ったんだけど、今日静香ちゃんの祝賀会なんだって。」

「祝賀会!?」