「こうしてると幸せで……翔真のこと抱き締めたくなる。」
「本当?」
「おお。こんな気持ちになるのは生まれて初めてで自分でもよく整理つかない。」
「俺も。」
「え?」
その言葉に未茉は顔を上げた。

「俺も好きすぎて未茉ちゃんにどうしていいのか分からない。」
「あ、名前!」
「ん?」
「呼び捨てしてたのに。」
「…呼んでいいの?」
「ダメ。やっぱいい!」

「・・何のためのフリだったんだ・・・」
呆れながら翔真はため息つくも、未茉は顔を赤らめ睨みながら言った。

「呼び捨てされたくらいで、胸がドキドキしてたら生きていけないだろ。」

「……!なにその可愛いの」
あははっ。とくすぐったそうに嬉しそうに笑う翔真は、

「未茉。」

両頬に手を伸ばし自分の方を向け見つめながら呼ぶと、

「がっ……」
顔を真っ赤にしながら未茉は、

「学校では絶対に呼ぶなよなっ!」
悔しそうにその手を振り払うと、少し間を置いて言わなきゃいけないことを少し考えて俯いた。

「…あたし」
「うん。」
それを察したのか翔真の顔からも笑みが消えた。

「健兄に告白みたいなのされて」
「知ってるよ。」
「キスもされて」
「…うん。」

真剣な思いには真剣に伝えなければならないと、未茉はあぐらをかきながら改まって翔真を真っ直ぐに見つめ話し始めた。

「みんなカッコいいからって健兄を好きになるけど、あたしにとってはそうじゃなくて、自分がバスケを始めるきっかけをくれた人なんだよ。」

「うん。」
「パパはあたしにバスケをやらせる気なかったんだ。ピアノとかバレエとか女の子らしい習い事やらせたくて無理やり通わせたしよ。」

「えっ・・。その割りには指揮の才能なかったよね・・・?」
「二日で辞めたんだよ・・・逃げた。」

‘だろうねぇ・・’と想像がつき頷いた。