「男に未茉って呼び捨てされんの別に普通なんだけど」
「ん?ああ……」
(アイツの告白態勢だったんだな。)
「翔真に急に呼ばれるとなんかいつもみたいにいられなくなる。あたしがおかしいのかな?」
(な……!!!)
人のシャツを引っ張りながら顔を赤くして上目遣いで答えを待つように見つめてくる未茉に、
(なんなんだよ!!こっちがドキドキするじゃねーかよ!!!)
何でこうたまに女を出してくるんだと怒りながらも結城は赤面する自分からごまかすように目をそらしながら言った。
「好きなんじゃねーの、か?」
「……え。」
「翔真を。」
「……」
目をぱちくりする未茉に結城は頼むからくっついてくれ。と心底思った。
自覚してくれーーと。
ガタンゴトン……
停車駅まで願うような時間を過ごし、人に押し流されながら電車から降りホームに出ると、
「じゃ、ちゃんと翔真んちに行けよ!」
「分かってるよ。」
何度もしつこいな……と思いながら、未茉は結城に返事をして、
「じゃーな。」と言い合って背を向け歩き始めると、
「ふー。」とため息ついて疲れた肩を落とし、結城は未茉が気になりふと振り返ると、
「……!」
改札に向かう人波の中、未茉は何かを考え込んだかのように立ち止まってた。
「何やってんだよ・・・」
早く行けよと言いに行こうとした時だった。未茉は急に振り向いてこっちへと駆けてやってくる。
「何どうし……」
「なぁ、結城!!」
「おう。」
「違ってたら恥ずかしいんだけどよ。」
「……違くねぇと思うから言ってみろ。」
「翔真ってあたしのこと好きなのかな?」
翔真の今までが友達としての優しさじゃなくて、好きな人への優しさだったら?
‘お前だけだ’
そう言った結城の言葉が離れずに脳内を駆け巡って消えなくて、確かめるように尋ね顔をあげると、
「おう。やっと気づいたか。」
おせーんだよ。ってため息つきながらもニッと結城は笑った。