「さっき気づいた。誰にも渡したくねぇって。」

意地悪な笑みでからかうような軽い口振りに、男女誰からも羨まれるそのルックスから昔から異常にモテるのに、誰にも何にも左右されない自分の進む道とバスケしか見てない本当は物凄く真面目な人だった。


「でもお前を幸せにする自信はねぇーな。自分が今ハンパすぎるから。」

そして自分に誰よりも厳しく、バスケは誰よりも努力家でどこまでストイックで、そんな健をパパよりも誰よりも一番近くで見てきた未茉の憧れだった。

「聞いてるのかよ。」
「聞いてるけど、なんっつーかもう…いいよ。」
「何が?」

「ちょっとは元気になったならいーよ。」
「なんだそのいい女気取り・・」
「は?別に気取ってねぇーよ!」
「キスで俺を元気つけたみたいな言い方しやがって」

「違ぇっ・・!!健兄のバスケへのプライドの高さはあたしが昔から一番よく知ってるもん。あたしなんかを好きっていう健兄には正直リアル感がねぇし…」

「クッ……ひでぇーな。でもそれでいーぜ?」
「!」
「いずれ分からしてやるから。嫌でも。」
ふふん。と相変わらず偉そうに上から勝ち誇った笑みに、

「……嬉しいような…怖いような……」
「お、なんか自覚し始めた?」
「させたんだろ!?わざわざっ無理矢理!!」
「お前はこんくらいしなきゃわかんねーだろ。」
怒る気も失せさせる健のしてやったりの態度に未茉の怒鳴る声が響いた。


「……」

目が覚めて玄関に出てきていた翔真にそんな二人のキスを見られていたことは、全く気づかなかった。