その一時間後、


夏休みで部活動の生徒しかいない明徳学園高校には、16本の赤い薔薇を手にしてCM撮影の時に着ていたスーツを借りて髪型もキッチリ決めてやって来た荻山拓哉。
熱く激しく脈を打つ高鳴る胸を押さえながらやってきた。

「るりちゃ…あ、いや白石さん……!」

彼女が東京バスケ界の天才プレーヤーだと知って彼女の過去の動画全てを見尽くせば見尽くす程、運命の相手だとは思わずにはいられなかった。

(るりちゃんを彷彿とさせるあの強気な眼差しと、この気弱な僕を叱ってくれる華麗なる立ち居振舞い。まさか現実世界であんなお方がいるなんて…!!!)

キラキラと目を輝かせながら校門がしまっていたので、未茉がいるであろう体育館へやってきた。


(生まれて16年間、赤い糸なんて信じてなかった…。まさか互いに天才と呼ばれるスポーツプレーヤーで、昨日、渋谷で偶然ぶつかってこのシューズを僕の前で落としていく奇跡…まさにこの僕の運命のシンデレラ!!!)

「まるで運命が僕たちに出会うために引き寄せたんだ…しかも…こんなに早くシンデレラに辿り着けるとは…まさに運命他ならない……」

すっかり王子様気分のオギタクは、バッシュと花束を抱えて進んでいく。
「「明徳ファイオッ!ファイオッ!」」
体育館からはバッシュの音やバスケボールが見えると、女子の姿も見えたので

「ついにここに…!!」
いそいそっとオギタクが花束を手に空いてた扉を手にしようとするも、
「くぅー…ドキドキするぅー…」
緊張で中々扉に手をかける勇気をもてないでいると、


「ん?なんだあのスーツ姿の男…」
校庭で走っていた一年男バス部員達が戻ってくると、体育館前でさっきから様子を伺い縮こまってる姿を見つけ、

「なんか用っすか?」
見るからに怪しかったので話しかけると、

「おわぁあっ!!!すっすっすみません…!!ああ怪しいもんじゃなくて僕は…」
突如後ろから声をかけられ、驚いて更に顔を隠して縮こまるオギタクに、

「あ…あれぇ?オギタクじゃね!?」

正装していても同世代のスポーツスターの顔にすぐに気がつき、驚くと
「どうしたー?」
体育館前で集まってる部員達の前にその時ちょうど結城と三上も校庭から戻ってくると、

「あっあの…わっわたくしのシンデレラ、白石未茉さんがこちらにいらっしゃるかと思ったのですが!!」


「「え・・・」」