「バッシュがなぁぁぁあいっ!!!」

言うまでもなく、未茉は朝から体育館で泣き声をあげていた。

「白石のピンチ・・・!」
床に伏せて泣き出す未茉に困ったキタローは、奥の手を使うことに決めた。
「上手く行くかは試したことないが、透視能力を使おうと思う…」
「おうっ!!頼むよ!!キタローぉお」
数珠を取り出し、目を閉じて強く念じるも、
「む…なんか…妙に光輝く何かが…」
「えぇっ!!?」
「だっだめだ…見えない…」
ぜぇはぁっと呼吸を忘れる程強く念じたものの、透視に失敗した・・・。


「ぬぁあんでぇえ!!片方ないのぉ!!!せっかく買ったのにぃ!!!うぁぁぁああああん!」

今日から夏休みだった。新しいバッシュに心踊らされながら朝練に来てバッグを見ると片方しか靴が入ってなかった。

「うるせぇーなっ!!白石!!朝っぱらから何泣いてんだよ!!」

いつものように二番乗りの結城と三上がやってきて朝から大声で泣いている未茉の声に苛立ちながら体育館の扉を開ける。

「ただでさえムシムシ暑いのにこれ以上イライラさせんな!」
ここまで来るだけで汗だくの二人は未茉の泣き声は耳障り他なかった。
「結城のバカー!!」
「うっせぇ!!」
といつもの言い合いになり三上が耳を塞ぐと、
「あ。」
珍しく朝練三番手の男がその扉を開く。


「おはよ。どうしたの?」

言うまでもなく、この男だけは違う。
「翔真ぁあ……ッ!!」
どんな時でも優しく未茉を心配そうに屈んで覗きこむと
「何かあっ……」
言いかける間もなく、ギュッ!!と翔真に勢いよく抱きつき、

「翔真あぁぁぁあああ~~~~~!!!」

うぁぁぁあん!と翔真の大きな体に飛び込みながら泣きつく未茉に

「……!♡」

朝からとてつもない幸せを感じる翔真はお構いなしに‘よしよし’と頭を撫でながらぎゅっと抱き締めると、

「あっちーってんだろっ!?」
と真っ赤な顔で吠える結城に、
「くぅ・・・」
何も役にたてない悔しさと目の前で仲良しの二人を見て涙をするキタローだった。