「おっさんも買い物かよ!?」
「いや、私は今撮影のインタビュー待ちでね。ほら、あの子知ってる?テレビとかで見たことあるだろ。あの子も高校生プレーヤーで…」
「んあ?ああ、嵐と一緒に映ってた?」
「ああ、そうだよ!イタリアでも活躍してる…」

「あ~…あと七千円も足りねぇぜ。」

興味のない話にはまるで耳を傾けない未茉は、バッシュを見つめながら、泣きべそをかいている。

「ほ…欲しいのかい?」
「欲しいに決まってんだろ!!こんなかっくぅいーバッシュ履いたら空も飛べるはず。バイスピッツ…」
「・・・。」

ちゅるちゅる…と恨めしそうにバッシュを見ながらタピオカをすすっていると、

「あと七千円で買えるの?」

「おう、さっきまで一万円あったんだけどよ、ちょっと食い過ぎちまって。もう五千円しかねえんだ」
「自業自得じゃないか・・・。」
だが小倉記者の目には、その横顔がやたらと悲しげに映ってた見えたのは、

(孤独の天才…あんなに部内で嫌われているのにも関わらず、健気に頑張ってるもんな…天才がゆえにみんなに疎まれて…)
うっ…とそう考えると、年なのか涙腺が緩む小倉は、

「君に七千円恵んであげよう。」

「ぅえっ!!?いいのぉお!!?何!?おっさ、ん神様なの!!?初めて見たよ!!神様!!!」

思いがけない言葉に目を丸くして未茉は飛び付いた。