「走れ!!」
未茉がそう指示すると一斉にゴールへと走り出す。
「早いッ!!!」
戻りの早さは二年や野村監督でさえ驚く程で、
「もう戻ってる早いっ!一年こんなに早かったか…?」
瞬発力と戻りの早さはまるで見違えるようだった。

(ドリブルやパスはさすがにそんなすぐには上手くならないが、ディフェンスと激しいプレッシャーのかけ方は未茉ちゃんにこの一週間で相当叩き込まれてたからな。)
笛をくわえながら走る審判翔真は成果の出てる一年に満足そうに微笑んだ。


「「ナイシュー!!」」
だが、二年のエース桐谷が直ぐ様スリーポイントシュートを決める。

「あの桐谷君は東京予選でも何回か出てたな。」
スピードもあり得点力もありそうな小倉記者が桐谷に目をつけた。
「はい。白石が入学してこなかったら間違いなく彼女がエースでしたね。」


「吉沢さんパス!ほら」
二年に激しいプレッシャーをかけられゴール前へ詰め寄られどこに出していいか分からない彼女にヘルプにいくと、
「白石さん!!」
受け取った瞬間ディフェンス陣に阻まれるも、ほんの一瞬のタッチでリングへとボールを放つ。

「…なっ…!?ちゃんとゴール見てんのかよ!?」
「なんであれが入るんだよ…」
機械のようにどこからどう打っても必ずネットを潜らせる。しかもほんの一瞬のタッチで。

「あんなことできる一年…全国でもいないよ…」
シャッターチャンスを失う程の速さにカメラマンもただただ言葉を失った。


「ナイシュー!!」
「白石さん凄いっ!」

一年の方に記者は視線を向けた。

「監督、一年はどういう布陣ですか?」
「ああ。伊東、吉沢、山下、塚野です。山下と吉沢だけは中学三年間バスケはやってたのですが、白石のように目立った実績はなく、吉沢以外は補欠だったんです。」
「補欠……」
「まぁ、吉沢も中学でスタメンだったとはいえ二年には到底及びません。」

「よし!吉沢さん今のパス最高だぜ!!もっと塚野さん狙ってオッケーだぜ!」

ゴール前へ戻りながら後ろ向きで走りながら未茉はみんなに声かけてくと、
「「了解!」」と返事しながら少し緊張が解れ固かった動きが和らいでく。