「あ、ノムさーん!!二年対一年で試合させて下さーい!!!」

「「えっ!?」」

突拍子もないそんな提案を未茉はすると監督と前原は仰天する。

「一年と二年でか……?」

「新チームは二年で組んだ方が実力的にもいいチームなのは分かってんだけど!!でも一年もチームのためになろうと努力してきたし、一度見てください!!!」

「いいんじゃん。はっきり身の程を知っといた方が。ねぇ前原?」
勝てるわけがないと強気の姿勢で出たのはもちろん矢野だった。
「……」
相づちを求められるも前原は無言だった。


「し……白石さん……!!」
ザワッ……と未茉の元へ一年女子達が不安そうな面持ちで集まってきて、
「私達まだ無理だよ…!二年と戦うなんて……」
「そうだよ!なんか怖いし!私達来年もあるから焦ってないから!!」

「来年だぁ?!バスケはコートの上では誰よりも常に一番にならなきゃ勝てねぇよ!!」
「「……!!」」
未茉の熱い言葉に一年女子は静まり返った。

「チャンスはある時にしか掴めない。来年とか先のチャンスを先伸ばしにする奴はスタメンになんかに選ばれねぇよ!!」

「「……」」
「その為に頑張って練習してきたろ!?絶対に勝つぜ!!」
一年女子の肩を叩くとみんなはゆっくり顔を見合せ頷いた。


「……どうする?前原。」
キャプテンである前原に野村監督は確認を取ると、
「どっちでも。」
無関心のような冷たい目で答えた。

「じゃやるぞ?」
「やろうがやらまいが結果は分かってるので。」
目を閉じながら結果は目に見えてるという前原のその言葉に矢野は嬉しそうに頷いた。

「負ければ白石も嫌でも大人しくなるでしょ。」
黙らしてやりたかったのかそう微笑む矢野に前原は口を閉じていた。


「なんだ…明徳女子は……」
男子とは全くの正反対の女特有の陰険さを側で肌で感じた記者は、未茉を見つめた。

(チームメイトから、
敬われるエース、湊君。
恨まれるエース、白石君……

こんなにも綺麗に分かれるものか。)