「そっかー。アイツら今頃インターハイ行きの新幹線の中かぁ……。」

清掃の時間、校庭の掃き掃除をしながら青空を眺め羨ましさ反面、悔しさ反面で結城はぼんやりと呟く。

「でさ、なんで香水つけてわざわざ早乙女に会いに行く必要があったの?」

「翔真・・・。その話の流れから、なぜそうなるんだ・・?」
感慨深く空を見つめる結城を完全にスルーした翔真が未茉に問いただすのを見て三上が呆れている。

「香水?匂う?昨日の夜に付けたんだけど。」
‘くんくん’と自分の腕や体を未茉は匂いをかぎながら聞くと、

「「いや。全然。」」
まるで興味がないのか分からないのか結城と三上は首を横に振るも、

「少し匂う・・・」
‘いい匂い分かる’と頷くキタローは未茉の小さな変化もすぐに察知する。


「で、なんで付けてったの?」
((しつこい・・・))
また話を元に戻す翔真のしつこさに興味のない結城と三上は苦笑いだった。

「別に付けてったわけじゃなくて、昨日夜に健兄と匠兄が来てくれて匠兄から誕生日プレゼントで香水貰ったんだよ。夜に付けたのが残ってたんじゃね?」

「!」
星河兄弟があの後、未茉の家に来ていたとは・・盲点をつかれた翔真は迂闊だった・と頭を抱え、


「で、優勝したら俺のものになれよと言ったのはどっち?」

「「「えっ!!?」」」
未茉は思わず真っ赤になり、結城はそのカッコよすぎるフレーズに驚き、

「言ってみてぇな・・インターハイの大舞台でそんな台詞。何人の女がそれでイチコロになるんだろうな」
「いやいや・・結城。それ相当な実力者じゃないと言えない台詞だから。」
遠い目をして憧れる結城に冷静に三上が鋭い突っ込みを入れる。


「…健兄。」
男の名を口にして顔を赤らめる未茉を初めて見た翔真にいつもの余裕も微笑みも消えていた。