そろり、そろりと忍び足で廊下を歩いてく未茉は一時間目が始まっている授業中のクラスの扉をそぉ~~~~と音をたてないように開け、
「えー従って~ここの訳は……」
担任・新米斎藤の声が響く中、気づかれないように床に四つん這いになりそぉーっと自分の席めがけてく。
「ここは、であってだから~~」
黒板に書いてく新米が気づいてないことをいいことに未茉はそろりそろりと進んでくと、
「あ。」
教科書に視線を落とし肘を付きながら授業を受けていた翔真がもちろん一番に気づくと
「シィッ!」
と未茉は人差し指を立てて“静かに!”とジェスチャーを送る。
「白石・・・」
もちろん隣の三上も気づき苦笑いだ。
「あ?」
結城も背後のざわざわ感に気づき振りかえると間抜けな未茉の姿に絶句してる。
ーーガタッ!
「「!!」」
席までもう少しのところで足がロッカーに当たり、音を立ててしまい
「なんだ?」
新米が教室の後方へと目をやると、
「すみません。筆箱落としてしまいました。」
翔真は席を立ち屈んで床に散らばした自分の筆箱の中身を拾う素振りを見せると、
「気を付けろー」
「はいすみません。」
と答えながら翔真の大きな体の影に姿を隠していた。
「さんきゅー」
影になりながら‘助かった’と胸を撫で下ろし、小声で未茉は翔真にお礼を言うと、
「……香水」
「ん?」
密着した体から匂ういつもとは違う未茉の甘すぎる残り香に翔真はすぐに気づき、
「おわっ!なんだよ」
‘くんくん’と匂いを嗅ごうとしてるとは知らずにただ翔真が首筋に顔を近づけてきて未茉は驚くと
(香水だ・・間違いない。)
確信を得た翔真はしかめっ面をした。