‘俺を欲しいって言えよ’


「言うわけねぇだろっ!!!」

未茉は我に返ったのだ。
我に返って大声で言ったのだ。


「健兄を欲しいとか!そんなこというわけないじゃんっ!確かに大好きだけど……」

もうドキドキする自分の顔を見られないように自分の髪をぐっしゃぐっしゃにかき乱してなんとか隠そうとした。

「なんで?」
「なんでって・・・マジ、これ以上は心臓がもたねぇ。これ以上は頭がおかしくなりそうだから勘弁して。」

顔を隠しながら震えギブアップする未茉を見て健はもうやめとこうと思ったのだ。


「本当だよ。何やってるんだろな。俺、これから全国二連覇かかったインターハイだぜ?」

「そうだよマジ・・。あちぃなー」
体から火が出たんじゃないかと思うくらい熱くなった未茉は、手で扇ぎながら熱を冷ますそんな可愛らしい姿を横目に健はフッと笑った。


「双子だからかな。」
「え?」
「匠が焦ると俺まで焦っちまうのかもな。可愛い弟の応援してやるつもりだったけど。この前の予選の明徳戦もそうだったし。」

「あ??」
こんな独り言も目をぱちくりさせて分かってない未茉に、

「男はさ、こういうスイッチ突然簡単に入るんだよ。」

「……」
「だからスイッチ入れさせないように予め電源は抜いとけ。」
「何?!どういう意味」
「だから早乙女にはキッパリ断れってこと。」

「ああ、うん。」

(早乙女……つーか早乙女より健兄だろ…。急に意味わかんねぇこと言いやがってあたしの心臓バクバクさせやがって・・死んじまうだろ)
歩きだす健の後を追うフラフラの足はどこをどう歩いてるのか感覚さえ失う程の衝撃だった。

とにかく自惚れでもなんでも電源を抜かなければならないんだな…考えながら歩いてると、


「……全国か。」

神社の階段を降りながら健は大きな太陽が顔出していく目の前の日差しを眩しそうに見上げながら呟いた。