「い……いらないよっ!」

あまりにも漠然とし、唐突な健の言葉を思わず急に真顔で聞かれた恥ずかしさからか未茉は突っ返した。

「前にも聞いたじゃん?付き合うかって。」
「だって冗談じゃん!いつも健兄は冗談でからかってくるじゃん!!」



「……冗談で言わなきゃ、本気になるだろ?」


ーーードクンッ……!!
その時、確かに未茉の胸が高鳴ったのが自分でも分かった。
ドクドク…と身体中が揺さぶられるような尋常じゃない心音に思考が停止する。

いつもみたいに妹をからかうような兄の目じゃなくて、試合の時みたいに真面目な目……

そしてどこか傷ついたような目。


「健兄……」

その目を見るのが怖かった。
立っていられないくらい震えて未茉は足元がフラッとすると、

そっと支えるように健が手を差し伸べ体を支えると、

「……!」

細くてしなやかな健の腕の中に体を預けていた。

真っ赤な顔をしたままの未茉に対して顔色一つ変えない健なのに、兄としてじゃない、男の顔で見つめてきた。

出逢った頃の記憶すらないくらい、子供の頃から一緒にいて、それは初めてのことかもしれない。


自分の指先が震えてるのが自分でも分かった……もう今までのような関係じゃいられないような気がした。



「俺のこと欲しいって言えよ。」