「いいか!?お前は可愛い!そしてマジでいい女だ。だから早乙女みたいに男が寄ってくる。」
「えっ!!早乙女もあたしの体を意識してると?!そんなことアイツ一言も言ってないぜ!?」
「言うか・・いちいちそんなこと・・」
「禅は言うぜ。」
「体はともかく、インターハイ行く前にお前に会いたいっていうくらいなんだから、相当お前に惚れてるんだよ。」
「惚れてるって・・・!!!こ・・恋とか?」
「ああ。」
ライバル大成相手なので平気で振られるように仕向ける計算高い健とは知らずに、
「とりあえずいいか?早乙女にその気がないのにその気を持たせるようなことをするな。」
「えぇ!?でも早乙女にそんなこと一言も言われてないよ。」
「言われる前に言うのだって相手を傷つけない優しさなんだ。」
「そ・・そんな自惚れたこと言えねぇだろ!!」
「お前は少し自惚れたくらいがちょうどいいんだ!!大体、湊だってなーーー」
「翔真?」
思わずいいかけた健はさすがに自分の口を押さえるように閉じ、
「間違えた。湊は何でもない。」
コホン……と訂正したのは、さすがに未茉が好きかもしれない相手の想いを言うのは御法度だと思ったからだ。
「じゃ、お前は早乙女が好きなのか?」
「早乙女?早乙女は友達だよ。」
「誰が好きなんだよ。」
「え」
「恋だぞ。恋。」
「恋…」
「今まで試合とか強い奴見たとき以外で男相手にドキドキした奴いるか?」
「いるよ。」
「誰だよ。」
翔真ーーという言葉が出るのかと思いきや、
「健兄。」
「……!」
「健兄じゃねぇか?去年もバレンタインもドキドキしながら健兄にチョコ作ってたし。」
「……過去形?」
「今はよく分かんないけど。」
「俺が欲しい?」
立ち止まった健は真っ直ぐな目で未茉を見た。