レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。

デニスは先頭を走っているジョンの背負っている大剣に,苦笑い。
「使う場面があればと思って,持ってきただけだ。使わないに越したことはないだろ?」
これを使う事態にならずに済んだのは,むしろ喜ばしいこと。リディアもそう思う。
――日が完全に沈んだ頃,三人はレーセル城に帰り着いた。
厩舎に馬を戻しに行ったところで,リディアは顔色を変えた。
「あら,やっぱり……」
厩舎では既に,父の愛馬である黒馬(こくば)・シャンポリオン号が体を休めている。
「陛下,お帰りになっているようですね。では,俺はこれで失礼します」
ジョンは皇女にペコリと頭を下げ,宿舎の方へと引き上げていった。